WORLD世界観
はじまり
遥か昔のこと。
世界は、神の御遣いである天使によって創造されたという。
祈りの言葉を持つ唯一の生物「人類」は、天使の力を借り、
大いなる進歩を遂げた。
だが、豊かさに満ちた時の中で、人々は祈りを忘れてしまう。
最初の悲劇は、約500年前。
人類の傲慢さに激怒した神は、天使を世界から引き上げさせた。
秩序を失った大地は、瞬く間に混沌の濁流に飲み込まれていく。
無数の都市が崩壊していく中、世界でただ一人
祈りを忘れていなかった聖女が、神に許しを請うたという。
神は聖女の祈りを聞き入れた。
最後に残った都市を空に浮かせ、人類を滅亡から救う。
それが、この都市。
浮遊する人類最後の都市、ノーヴァス・アイテルである。
大崩落グラン・フォルテ
10数年前、この都市を大規模な崩落が襲った。
《下層》と呼ばれていた一般民衆の居住区の一部が、突如として崩れ落ちたのだ。
岩盤とともに下界へ落ちていった人間は数千とも言われ、生き残った人間も家族や財産を失った。
火災や地震といった災害と違い、崩落事故はなんの痕跡も残さない。
まるで初めから何もなかったように、全てが一瞬にして消失するのだ。
犠牲者を弔うこともできず、被災した人々の胸には今なお癒えることのない喪失感が拡がっている。
そして何より、防ぐことができないこの災害は、都市に住む全ての人々に
「 都市は堕ちる 」という強烈な恐怖を刻みつけた。
都市の浮上から500年以上続いた安寧の時代は、もう戻って来ない。
羽つきはねつき
大崩落以降に発生が確認された、背中に羽が生える病気である《羽化病》。
その患者が、一般的に「羽つき」と呼ばれている。
羽化病は伝染するとされており、また老若男女を問わず発症するため、羽つきはほぼ全ての住人に忌避されてきた。
しかし、羽つきが現れてから十数年を経た今でも、患者を全員隔離するには至っていない。
発症すると最初は背中に小さい羽が生え、それが徐々に育ち、最終的には大きな羽となる。
大きく育った羽は服などで隠せる大きさではなく、家族等に匿われている場合でも表を出歩くことは不可能だ。
なお、その羽で飛ぶことができた羽つきはいない。一般の住民に対しても羽つきの通報は強く推奨されているが、
一部の娼館では、特殊な性癖の客のために羽つきを娼婦として供しているという噂もある。
羽狩りはねがり
《羽化病》の患者である《羽つき》を捜し出して保護し、
治癒院へと連行・隔離することを任務とする組織が「羽狩り」である。
正式名称は《防疫局》だが、その強制的な手法を揶揄して「羽狩り」と呼ぶのが一般的だ。
なお、伝染病である羽化病の患者を隔離することは国としても喫緊の課題であるため、
羽狩りには「羽化病患者の保護を妨害するものの強制排除権」が認められている。
この「強制排除」には鍵の掛かった扉を蹴破ることから悪質な妨害者の斬り捨てまでが含まれるが、
強制的な隔離への反発も特に牢獄では大きいことから、隊員には荒くれ者が多い。
防疫局の責任者は、最近頭角を現してきた若手貴族のルキウス卿。牢獄隊の隊長はフィオネが務めている。
不蝕金鎖ふしょくきんさ
暴力や売春という牢獄の暗黒面を握り、実質牢獄の法を司っているとも言えるのが《不蝕金鎖》である。
元は、大崩落直後の無秩序・食糧不足状態の中で、崖の上の下層から買い入れる物資を仕切る集団だった。
その後、国から半ば見捨てられた牢獄の秩序回復を担ったことから、住人からは一定の信頼を得ている。
今では国から治安維持のために派遣されている衛兵も形ばかり存在するものの、実力も住人からの信頼も不蝕金鎖には遠く及ばず、いくらかの賄賂によって骨抜きにされているようだ。
なお、数年前に初代の頭が亡くなり息子であるジークが正式に跡目を継いだが、その際に副頭派が組織を割って独立し、現在も縄張りや商売の上での衝突が絶えない。
本拠地は、娼館街で最も大きな娼館である「リリウム」の上階。
ノーヴァス・アイテル
遥か昔、この世界は神の遣わした天使が作ったという。
人類は天使の力を借り、他の動物が持たぬ知恵や技術を獲得し栄華を極めた。
しかし繁栄は長く続かない。人々はいつしか感謝の祈りを忘れ、それに怒った神は、天使たちを天上へと引き上げさせたのだ。
世界の礎たる天使を失った大地は瞬く間に混沌の濁流に呑み込まれる。
都市が次々と滅亡していく中、聖女が神に許しを請うた。
神は、聖女の必死の祈りに心を打たれ、彼女と彼女の敬虔な信者を許し、都市を天空へと浮かせることで人類を滅亡から救ったという。
その都市こそが、浮遊都市《ノーヴァス・アイテル》だ。
この街は、聖女に祈りを捧げる者のみが乗ることを許された、聖なる方舟なのである。